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−続・ガラス原料あれこれ(62)−
 
[ガラス原料と天然資源]

梅雨です。
本来は年中で一番気候がいい時期のはずですが、
高温多湿でイヤになります。
でも、雨に濡れたアジサイを見るのもいいものですが。

さて、今回は前回に続いてガラス原料の現状について
考えます。
ガラス原料は、珪砂、長石のような天然資源に由来するものと、
ソーダ灰を始めとする化学工業薬品(*)に大別することが出来ます。
前回は、一部の化学工業薬品が景気の動向によって製造を
打ち切られる状況をお話しましたが、今回は天然資源由来の
原料について考えたいと思います。
(*もちろんソーダ灰も、アメリカのトロナ灰のように天然物の
場合もありますし、化学工業薬品についても天然原料が出発原料
となっている場合がほとんではありますが)

このうち、ガラスにとって一番数量的にも比率の高い珪砂については
幸いなことに、まだまだ潤沢に天然資源は存在します。
珪砂は、いってみれば砂ですから、地球上にいくらでも存在します。
ただガラス用に使えるのは、シリカ(SiO2)の純度が高くて
鉄分(Fe2O3)などの不純分がなるべく低く、しかも成分が
安定していること、さらに、粒度(砂の粒の大きさ)がガラス熔融に適した
大きさになっていること(一般ガラス向けでおおむね0.5mm以下)
などが条件となります。

この条件にあてはまる砂が、オーストラリアやアジア南部に存在
します。フラタリ珪砂は、オーストラリア東北部の熱帯地域の海岸地帯
に大量に存在します。サラワク珪砂はボルネオ島北部で採掘されて
います。天然でもほとんど均一の粒度で成分も安定していて
あまり加工しないでも十分ガラス原料として使用することが出来ます。

日本でも以前から珪砂は豊富に存在しています。
愛知県瀬戸市付近の珪砂が有名です。この場合は採掘した原料を
粉砕、水洗い、篩分けなどの工程を掛けてガラス原料に適した状態に
加工します(また粒度をさらに細かく粉砕した石粉と呼ばれる
シリカ原料もあります)。
このため、国内珪砂はフラタリなどの輸入珪砂に比べて、コストが少し
高くなってしまう問題があります。また不純分の量も、輸入珪砂より多い
場合が多いのです。
ただ、国内珪砂はアルミやカリの成分が適量入っている場合が多く、
添加原料を少なくするメリットもあります。
長石も国内珪砂と似たプロセスを経てガラス原料に精製されます。
こちらは輸入品はあまり存在しません。
長石も鉄分がどうしても多くなりますが、うまく設計すれば
アルミ、カリなどを単体原料で使用せずに済むので、溶融し易いバッチ
を作ることが出来ます。

このようにガラスのメインとなる珪砂、長石については、資源の枯渇という
問題は、今のところあまり発生していないので、非常に助かりますが、
一方、少し問題になっている原料が存在します。
例えば、蛍石(CaF2)。
日本では、蛍石は主に鉄鋼生産用に大量に輸入されています。
生産地は、ほとんど中国に頼っています。
この蛍石の品位(純度)が最近顕著に悪くなっているようです。
その要因は色々あるようですが、ひとつには中国の自国の資源輸出
を規制していこうという動きや、従来蛍石の鉱石が、人手によって
選別されてきたものが(手選鉱)、人件費の上昇などで難しくなってきたなど
の理由があるようです。いずれにしても、ほとんど中国一国に原料ソース
を頼ってきたツケがまわってきたともいえます。
同じような問題は、リン化合物でも起こっているようです。
リン酸の価格はここ数年は数倍に上昇しています。

蛍石=フッ化カルシウムは化学工業薬品(合成物)もありますが、
価格が非常に高く、コストの点で比較になりません。
蛍石はガラス原料としては、熔融促進剤という役割がある一方、
もうひとつ、ギョク(白色白濁ガラス)に欠かせない原料でもあります。
熔融促進剤としては、クレオライト(Na3AlF6)など代替原料は
ありますが、ギョクに関しては蛍石がどうしても不可欠となります。
当社も従来は蛍石85%品を使用してきましたが、原料の純度の変動リスクを
考慮して、蛍石98%品に移行中です。

またガラスにとって重要なアルカリ源であるカリの価格もここ数年来
毎年どんどん上昇しています。
カリは農作物の肥料として欠かせない重要成分です。
最近のアグリビジネスの伸張に乗っかってあっという間に
数倍になりました。
いわゆる資源バブルはリーマン・ショックではじけましたが、
カリの高騰だけはそのまま残っています。
この場合も、主な出発原料となる塩化カリの主要な産出国がカナダ
一国に限られるという問題も高騰に拍車をかけています。
炭酸カリはこの4月に再び30円以上値上がりしました。
当社は今のところ何とかバッチの値上げをしないように
企業努力しておりますが。

以上のように、ひとつは数年来の資源バブル、それから、
それに続いた不況などの世界経済の混乱にガラス原料も
巻き込まれて、様々な問題が起きています。
その中で、何とか良質で低コストで品質の安定した原料を
使用するように当社は今後も一生懸命努力する所存です。

今回も話が固すぎましたね。ガラスだけに固くて当然ですか(汗;)。


※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)



 
 
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