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−続・ガラス原料あれこれ(61)−
 
[不況と環境と原料生産]

もう5月も終わり。新緑のきれいな季節ですね。
日によって暑い日もありますが、基本的には穏やかで
過ごしやすい季節です。
景気の方も、大企業の3月決算も終わり少し落ち着いて
きたようです。まだまだ、きびしい状況ではありますが。
余談ですが、このように大企業がある特定の時期に決算を
集中させるというのは、日本独自の現象だと思われます。
それによって、色んなマイナス面が出て来ます。
特に、今回のような景気後退の局面では、各企業のそれに対する
行動が決算期前ということで、さらに増幅同調されるので、
落ち込みが大きくなったという面は否めないと思います。
杉花粉の問題(過渡に同一行動を取り過ぎるという国民性!?)
とどこか似ていますね。

さて、今回のテーマは「不況と原料」です。
今回の不況で、いくつかの化学工業薬品の生産が終了しました。
もう日本では、その原料を生産するメーカーがなくなるという
ことです。
ひとつは、カドミウム関連の原料です。
硫化カドミは黄色(カドミ黄)や赤色(セレン赤)のガラスを
作るのに不可欠な原料です。
もともとヨーロッパのローズ指令(RoHS指令。電気電子機器
への特定有害物質の含有を禁止するもの)でカドミの使用が
制限されるようになってきたこともありますが、今回メーカー
が生産中止を決断した一番の背景は、不況が原因だと思われます。
好況期には、ある程度採算が取れていれば、生産規模が多少減少
しても生産を維持して来ましたが、今回の打撃で社内の不採算部門
の一斉見直しから、将来性も考えて生産中止を決定したようです。

カドミ黄は、鮮やかな黄色に発色することから、自動車のフォグランプ
やサングラス、さらに瓶ビールのケースなどにも使用されたりしました。
ただ、その毒性懸念(硫化カドミは劇物指定です)から、徐々に使用が
減り、その減少はローズ指令で決定的になりました。
しかし、このメールマガジンでも何度もお話しているように、
ガラスの中に成分として入った場合には、各成分は比較的安定
していて、外に溶け出すという度合いはかなり低いのです。
ですから、ローズ指令でもガラスについては規制対象外として
います。もともとローズ指令自体が、電気電子機器に対する
規制という面もあるのですが、同じくローズ指令の対象原料である
鉛は、今でもバカラなど有名クリスタルメーカーで堂々と使用
されています。

いずれにしても、原料が手に入らなくなるというのは困ったことです。
当社のサングラス・カラーでもカドミを使用したガラスは何種類か
あります。現在は多少在庫もありますが、今後はいつかなくなることを
覚悟しなければなりません。
しかし、これもかつてこのメールマガジンでお話したと思いますが、
フォグランプのカドミ黄のように、むしろカドミ黄という色が
消費者に、環境でのマイナスイメージを持たれてしまうことによって、
その色が自然に淘汰されていくという現象も起こり得るとは思いますが。

黄色は、酸化セリウムで発色させることは可能です。ただ、鮮やかな
カドミ特有の黄色にはなりませんが。
赤色も金赤や銅赤といった方法で発色させることは可能ですが、
セレン赤(硫化カドミとセレン化カドミで発色)の同じ色みを
出すことは困難です。
私自身は金赤の少し紫がかった赤色の方が、セレン赤の少し黄みがかった
赤色よりも好きですが。

化学工業薬品の生産中止については、リサージ(酸化鉛)粒状品、
砒素製品、六価クロム製品(三価クロムは無害)など、徐々に
増えています。
いつも述べていますように、代替原料はあります。そういう工夫をして
これまでも先人は知恵を絞ってきた訳ですから。
経済性、環境問題、色々なファクターを考慮しながら、今後もよりよい
原料を模索して行くつもりです。

次回は、同じく景気と環境に大きくかかわる、天然資源原料について
考えたいと思います。



※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)



 
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