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−続・ガラス原料あれこれ(27)−
 
[古代のガラスと現代のガラス]

7月末になって、やっと梅雨明けが宣言されました。
今年はなかなか梅雨が明けなかったですね。
子供の頃は、毎年夏休みとほとんど同時に梅雨明けだったように
記憶しますが。

さて、夏休みと言えば宿題。夏休みも終わりに近づいてきて、
半べそをかきながら、図書館で宿題を片付けた記憶がある方も
多いのではないでしょうか?
今回は、少しアカデミックに「古代のガラス」を考えてみます。
数年前に、ヴェネツィアのムラノ島のガラス博物館に行ったことがあります。
そこでは、色とりどりのヴェネツィアン・ガラスに並んで、
メソポタミアを初めとする古代ガラスがたくさん展示されて
いました。その横には、それらのガラスの化学組成も表示されてあります。
ところが、それらの数字は、可笑しくなってくるぐらい現代の、
普通のソーダ石灰ガラスのそれに酷似していたのです。

ソーダ石灰ガラスというのは、シリカ(珪酸、SiO2)が70%、
ソーダ(Na2O)が15〜17%、石灰(CaO)が7〜12%、
それにアルミナ(Al2O3)が少々のガラスです。
文字通り、シリカにソーダと石灰が入ったガラスです。
現代の、窓ガラスや自動車ガラスやビンガラスなどに使われるガラスは、
ほとんどこのソーダ石灰ガラスです。

そのソーダ石灰ガラスの組成が、紀元前2000年のメソポタミア以来
同じというのが、実に不思議な気がしたのです。
ガラスになる物質の組み合わせは、いくらでもあるのです。
なのに、4000年の時を経ても、基本は何も変わっていないのです。
何という、予定調和の世界でしょう!

でも、よく考えてみると、これは当たり前のことなのかもしれません。
古代の人間も、たまたま身の回りにふんだんにあった素材でガラスが出来た。
ふんだんにある素材だからコストも安い。
砂も、カルシウムも、ソーダも地球上にいくらでも存在します。

良くある想像の話ですが、
大昔たまたま旅人が砂漠で木を燃やして焚き火をした。
そうすると、いつの間にか焚き火の下にガラス状のものが出来ていた。
砂+カルシウム+ソーダ+熱で、ガラスが出来上がっていたという訳です。
人類が初めてガラスに出会った瞬間ということです。

この話の信憑性はともかくとして、人類が最初に使用するようになった
ソーダ石灰ガラスが、今でもたくさん使用されているなんて
何だか不思議な話です。
ちなみに、中国の古代ガラスはまったく違っていて、
酸化鉛(PbO)が主成分となっています。
一説によると、鉛クリスタルのルーツは中国だとも言われています。

今回は、普通のガラスの話でした。
でも、ちっとも普通じゃなかったですね。


 
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