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−続・ガラス原料あれこれ(73)−
 
[アルカリの功罪]
※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)

5月も終わって、そろそろ梅雨の季節に入ります。
梅雨は、雨が多くて湿度が高く蒸し暑い日が多くて
嫌になりますが、でもその雨のおかげで、植物は成長出来るし、
我々も飲み水とかの心配をしなくていいのですよね。
同じようなことがガラスの成分でも有ります。

さて、今回のテーマは「アルカリの功罪」です。
アルカリといいましたが、正確には周期表の第1族に属する
アルカリ金属のことで、代表的な元素としては
ソーダ(ナトリウムNa)、カリ(K)、リチウム(Li)
があります。ガラスの中では酸化物の形を取りますので、
それぞれNa2O、K2O、Li2Oになります。

これらの成分は通常ガラスの中では、ガラスの主成分である
シリカ(SiO2)をいわば「溶かす」役目をします。
ですから、ソーダ分をたくさん入れるほど、ガラス・バッチ(原料)
は低い温度で溶けてガラスとなります。
しかし、一方でたくさん入れ過ぎるとガラスの化学耐久性は低くなります。
化学耐久性が低くなると、ガラスの中のアルカリ分が外へ溶け出し
やすくなり、ガラスの表面が曇ったり、容器の場合には中の成分に
影響を与えたりします。
ついでに、液晶ディスプレー用の基板ガラスではアルカリの溶出
を極端に嫌うため(中の液晶成分が変化してしまう)アルカリを
全く添加しない無アルカリガラスを使用します。
このガラスのことは以前にも触れましたが、アルカリの代わりに
硼酸(B2O3)を使用します。

アルカリ成分のソーダ、カリ、リチウムの3つの成分の中で
ソーダ分は、ガラスの原料として代表的な成分です。
ソーダ分を与えるのはソーダ灰(炭酸ナトリウム、Na2CO3)
です。数年前の資源インフレで多少価格は上昇しましたが、他の
アルカリに比べコストも安く、広く用いられます。

一方、カリ分はソーダと比較してコストは若干上がりますが、
いくつかのメリットを持っています。
原料としては主に炭酸カリ(K2CO3)が使用されます。
カリを使用することにより、鉄分の発色が抑えられガラスの透明さ
が増し、ガラスの艶も増すと言われています。また着色原料の発色も
より鮮やかになると言われています。
カリをアルカリの主成分に使用したガラスを、カリ・クリスタルガラス
と呼ぶ場合があります。ボヘミアン・ガラスが有名です。
また当社の「Aスキ」もカリ成分を多く入れています。

また、ソーダとカリを併用することによりいわゆる「混合アルカリ効果」
が起こります。
「混合アルカリ効果」とは、異種のアルカリ分、たとえばソーダとカリ
のそれぞれ単独使用時よりも、混合して使用することによって、密度、硬度
などが増す現象を言います。
それにより、化学耐久性が上がり、熱膨張率が下がるなどガラスにとって
好ましい結果が得られやすくなります。

それからリチウムです。リチウムを添加することによって、ガラスは
とても溶けやすくなります。ただし添加し過ぎると、今度はガラスの
化学耐久性が悪くなったり、失透、分相などガラス欠点の現象が
起こりやすくなります。
一つの目安として、ガラスの組成の1.5%が上限となります。
当社の「ALスキ」もこのリチウムの特性を活かしています。
ただリチウムは、リチウム電池が電気自動車向けに使用されるなど、
注目を集めている資源で、価格上昇が心配されます。

このようにアルカリはガラスにとって不可欠でとても便利な
成分ですが、使用する際には十分コントロールが必要ということです。



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